真冬の八ヶ岳を縦走しながらあっちこっちの頂上で宴会をしよう 1日目


真冬の八ヶ岳頂上で、毎度おなじみ ゆうパパ(=Iさん)とともに耐寒宴会を開くことになりました。
またまた、はちゃめちゃな登山となりそうです。



前日夜10時に大阪泉大津の自宅を出て、南八ヶ岳登山の玄関口の美濃戸に
午前3時に到着しました。
7時30分に美濃戸にある登山口を出発です。
美濃戸山荘さんにあるトイレで朝の行事を済ませ、登山者カードを提出して
南沢を行者小屋に向けて歩きます。
気温は少々高めで、登山口で氷点下10℃です。



南沢で自分たちの歩いてきたトレースをバックに記念撮影です。



今日は12月の登山と異なり、天気が良さそうで頂上での宴会が期待できます。
今回も自分たちの冬山装備の荷物よりも、酒とつまみのほうが重いのです。
頂上での宴会のためには、酒とつまみを担ぎ上げることが不可欠です。

1泊2日の縦走ですが、各頂上と稜線で泊まる小屋の全場所で酒を飲むために、
ビール2リットル、焼酎1リットル、地酒2リットル、ウィスキー500ミリリットル
や、お湯割り用の水2リットルに加え、寒ブリの刺身や鮪、鯛の刺身、ゆうパパが昨日
鹿児島出張で仕入れてきた、薩摩の黒豚および地鶏の燻製、あたりめ、〆鯖など相当量の
酒肴をリュックに詰め込んでいます。




9時40分に行者小屋に到着です。
これから目指す阿弥陀岳(標高2805m)をバックに記念撮影です。
太陽が昇り始めると気温が更に上がり、この行者小屋前ですでに氷点下8℃まで
上がってきています。
行者小屋では、おにぎりをひとつ食べて急登に備えての腹ごしらえをしました。



行者小屋を10時前に出発した我々は、阿弥陀岳の北側のルートを登ります。
このルートは、阿弥陀岳と中岳の鞍部となる稜線に直接登るため、かなりの急坂です。
酒と肴を詰め込んである重たいリュックサックがとても重く、また標高が高くなって
きたので少し登れば息が切れます。
20mごとに息を整えながら歩くのです。
この試練に耐えるのも、頂上での宴会が待っているからです。



急坂につき、滑落に注意しながら一歩一歩アイゼンとピッケルを雪に食いこませて
歩きます。
バックには横岳がそびえています。
また、このルートは急坂に加えてすり鉢状になっているので、よく雪崩が起こることで
有名です。
厳冬期は雪がしまっているので雪崩の心配は少ないと思っていましたが、今日はかなり
気温が上がってきているようで、両横から雪のかたまりがポロポロと落ちてきます。



行者小屋から1時間強で稜線に出ました。
バックには中岳から八ヶ岳最高峰の赤岳への稜線がきれいに見えています。



さらに稜線を阿弥陀岳に向けて登ります。
この稜線も狭くてかなりの急坂なので、滑落には十分注意が必要です。
一度足を滑らせると、谷底まで500mほど真っ逆さまに落ちてしまいそうです。
それでも、この稜線を歩く人が遠くに見えます。
天気が良いので、この稜線の登山を楽しむ人も数名いるようです。


途中で後ろを振り向くと、中岳から赤岳への稜線が更にきれいに見えました。



11時30分、今回の登山で最初の頂上、阿弥陀岳(標高2805m)に到着です。
とりあえず、二人でピッケル万歳です。
さすがにこの季節です。頂上に誰もいません。
この写真は岩の上にカメラを置いて、セルフタイマーで撮りました。
他の二人で映っている写真もほとんどがこの手法です。



今回の登山で1回目の宴会スタートです。
当然、先ずはエビスビール(ロング缶)で乾杯です。
おけパパはビール缶を片手に、阿弥陀岳の標識と赤岳とともに記念撮影です。

厳冬期の冬山では、缶ビールをそのまま飲むと、唇が缶に凍結してくっついてしまうため
注意が必要です。かならずコップに注いでから飲みます。



ビールの次は、地酒をコップ一杯づつ飲みます。
その次には焼酎お湯割りを2リットルほど飲むのです。
お湯割り用の水を持っていましたが、足りないので、その辺の雪を溶かして更に
たくさんの水(お湯)を作りました。

ゆうパパが鹿児島から持ってきた、黒豚の燻製が油が乗っていてとてもおいしいです。
天気は良く、気温が高いといっても、この頂上では氷点下8℃ですから、このように
脂肪分が豊富な食料はとても貴重なのです。

存分に頂上からの景色と酒、つまみを堪能した後に締めは山菜そばとお茶漬けを作って
昼食としました。
気がつくとすでに12時40分になっていました。
この頂上で1時間10分ほど宴会をしていたようです。



12時45分、少しだけ軽くなったリュックサックを背負って、次の山の頂を目指して
出発しました。
少しほろ酔いなので、稜線の上で酔っ払いおじさんとなって谷底に滑落しないように
注意が必要です。



これから目指す中岳、そしてその後に行く八ヶ岳最高峰の赤岳を見ながら稜線を下ります。



中岳へ向かう稜線上で少し広くなった場所があったので、赤岳をバックに記念撮影です。



酔っ払いおじさんは、記念撮影の時も滑落しないように、しっかりとピッケルで身体を
確保しています。



中岳手前の両側の切れ込んだ稜線で記念撮影です。
雪庇を踏みぬいて滑落しないように注意が必要です。
見渡す限り、今、阿弥陀岳から中岳、そして赤岳にかけての稜線上にいるのは我々二人
だけのようです。



13時30分、中岳頂上に到着です。
この頂上は、人が2〜3名立っているほどのスペースしかないので、ウィスキーを片手に
立ったままで宴会?です。

ウィスキーは冬山では貴重です。かつて、雪山で遭難して動けなくなった人が、持っていた
ウィスキーを飲みながら夜を明かして救出されたというニュースがありました。
ウィスキーをストレートで飲むと、こんな寒い中でも胃のあたりから体が熱くなってきます。



ピッケルと髭のマークで有名なニッカウィスキー「ブラック」、そして赤岳です。



狭い稜線を抜け、少し広くなった中岳と赤岳の鞍部に到着です。
これから目指す赤岳をバックに記念撮影です。
このあたりは常に風が強いために、雪が降っても粉雪では吹き飛ばされて積もらないのです。
そのために茶色い地肌が見えています。



いよいよ赤岳の名物、岩肌の鎖場を登ります。



夏は鎖を使って登りますが、冬は鎖が凍てついているために使えず、雪の急斜面を直接
アイゼンとピッケルを効かせて登るのです。
足を滑らせると谷底なので、少々酔っ払いおじさんは緊張ぎみです。



ピッケルで身体を確保して記念撮影です。
後ろを振り返れば谷底なので怖いですね。



14時45分、酔っ払いおじさん二人は、八ヶ岳最高峰の赤岳(標高2899m)に
到着です。
阿弥陀岳を出発してからここまで誰にも出会わずにやってきました。
赤岳頂上も我々二人だけの世界です。



ここでも先ずは乾杯にエビスビール(ロング缶)です。
赤岳頂上も厳冬期とはとても言えないくらい温かく、氷点下8℃です。
風もあまりないので太陽の光でとても温かく感じます。



先ほど登頂して宴会を行った阿弥陀岳をバックに、ウィスキーを飲みます。
ゆうパパはバランタインの17年ものをストレートです。



おけパパは黒髭ニッカブラックをストレートです。

事件が起きたのは、この直後でした。
ゆうパパがウィスキーをリュックサックに入れ、酒肴などを取り出したり整理していた
ところ、何と、1リットルのペットボトルに入れてきた宮坂酒造の「真澄」の季節限定
地酒「樽酒あらばしり」を手から滑らせてしまったのです。
ペットボトル「真澄」は、我々二人が見つめる中、いとも簡単に雪の斜面にころがり、
我々が救出する間もないほど素早く、岩場へ落ち、そこでワンバウンド、ツーバウンド
した後に、谷底へと滑落していったのです。

重たい目をして担ぎあげてきた「真澄」1リットル約4000円が、平成23年2月5日、
ここ赤岳に眠る。 となってしまったのです。残念!



「真澄」を惜しみながら、赤岳頂上で約40分ほど宴会した後、15時30分に出発。
次の目的地である八ヶ岳稜線での山小屋「赤岳天望荘」に向かいました。
冬山の日暮れは早く、すでに太陽が西に傾きはじめていました。
目的地方向には横岳がどっしりと構えています。



赤岳の頂上を振り返る ゆうパパです。



目的地である稜線上の山小屋「赤岳天望荘」を眼下に見ながら赤岳の稜線を下ります。
ここでも、酔っ払いおじさんの我々は細心の注意を払いながら下ります。



16時少し前、山小屋「赤岳天望荘」(標高2722m)に到着です。
赤岳天望荘は、厳冬期には珍しく、この2月の一時期だけ開けてくれている山小屋で、
我々冬山岳人にとってはオアシスのような存在なのです。



17時15分、阿弥陀岳に太陽が沈みました。



日没後に阿弥陀岳が夕焼けに映えていました。



ということで、山小屋で夕食を取りつつ宴会です。
アサヒスーパードライ(350ml缶)をぐいっと飲みほした後、寒ブリ、鮪、鯛の
刺身と砂ずりの煮込みポン酢あえを酒肴に、もう一方のペットボトル入りの地酒を
飲みました。これは、山野酒造「片野桜」生しぼり純米酒です。

その後、「真澄」が滑落したことを山小屋の主人に話したところ、何と、種類は違いますが
「真澄」を置いてあるということで、2合分けていただきました。
さらに、赤ワイン一本も加えて飲んでしまった我々は、更に酔っ払いおやじとなったのです。

そして、夜8時前になって、真っ暗になった外に酔い醒ましも兼ねて星空を見に出たのです。
とても寒かったのですが、下界では見ることのできない満天の星空を仰ぐことができました。
オリオン座や冬の大三角形カシオペアに北斗七星、あっという間に去っていく流れ星に
ゆっくり動く人工衛星まで、それはそれはプラネタリウムのようでした。

こうして我々は星空を堪能して夜8時には就寝したのでした。